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養子縁組とはどのようなもの?
相続ともつながる養子縁組(ようしえんぐみ)の話をしてみたいと思います。と言いますのは、最近それに関係する二つの話題を目にしたからです。
一つ目は昭和のスターだった故梅宮辰夫さんの養子についての話です。2019年12月に亡くなった梅宮さんの家族は、妻と一人娘のタレント梅宮アンナさん、そしてその長女の3人でした。生前に税理士さんからこのままだと多額の相続税が発生すると言われ、節税のため長女を梅宮家の養女つまり、アンナさんの妹にするという相続対策をとっていました。結果として娘を二人にして生前贈与などのさまざまな方法を組み合わせることで、相続税は大幅に軽減できたと言います。それでも亡くなってから、アンナさんは各種の手続きに忙殺されたようです。
あと一つは大阪であった、いやな事件の話です。高槻市の資産家女性が自宅で殺され、その養子の若い男性が逮捕されました。彼は保険会社に勤めていて、その顧客として母親ほどの年齢差がある女性に近付き、総額1億5千万円ほどの生命保険契約を結びました。そしてその後で養子縁組をして、事件を起こしたのです。ところが逮捕後に警察の留置場で自殺してしまいました。結局真相は解明されないままで、後味の悪さだけが残りました。
この二つはいずれも相続に関係して養子縁組を行った例ですが、ではそもそもこの養子縁組制度とはどのようなものなのでしょうか。
簡単に言いますと、血縁関係とは別に人為的に親子関係をつくるためのものです。これによってできた親と子は、それぞれ養親(ようしん)、養子(ようし)となり、父母はそれぞれ養父(ようふ)、養母(ようぼ)となります。ちなみに養子の性別は女性だけにあり養女(ようじょ)と呼びますが、男性にはありません。またこの親と子を養親子(ようしんし)と呼び、血縁による実親子(じつしんし、じっしんし)と区別します。
この養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。前者は実親とも親子関係だけは残るのに対し、後者はその関係も完全に消失する点が大きな違いです。
欧米では戦争による孤児や恵まれない子供を救うため古くから養子縁組制度が導入されていますが、日本で本格的に導入されたのは1988年(昭和63年)に特別養子縁組制度が施行されてからです。
現在多く行われている養子縁組の例としては、離婚後の再婚に伴う連れ子の養子、また梅宮家のように孫を養子にして相続税の節約を図る養子や、男子に家を継がせるための婿養子などです。昔は新聞紙上を通じての養子仲介も行われていたようですが、養女のもらい手の多くは芸妓屋であったとのことです。
なお養子縁組と似たものに里親制度がありますが、こちらは親が子を育てられない時、代わりに一時的に子を預かって里親が養育する制度で、法的な親子関係はなく親権者は実親にあります