メールでは遺言になりません

メールでは遺言になりません
 
先月の紀州のドンファンに引き続き、遺産相続のトラブルの話です。
歌手や作曲家として数々のヒット曲を生み出し、多くのファンに親しまれた平尾昌晃さんが昨年7月に79歳で亡くなりました。「瀬戸の花嫁」や「カナダからの手紙」などでご記憶の方もおられると思います。ところが最近になり、その遺産相続でテレビのワイドショーなどを賑わす騒ぎとなっています。
平尾さんはかつて二度離婚し、亡くなる前にはM女さんと再々婚をしていました。M女さんは平尾さんの音楽事務所のマネージャーでもあったらしく、晩年の生活を支えていたようです。それが今後50年にも及ぶ作曲家としての印税を含めた総額60億円と言われる遺産相続を巡って、平尾さんの三男から訴えられています。
三男は前妻の子で歌手としてもデビューしていますが、そもそもM女さんと平尾さんの婚姻自体がいわゆる後妻業ビジネスによるもので正当ではないと主張しています。つまり配偶者として認めないということで、そうなると配偶者相続分は無くなり、一般的には長男とその異母兄弟である二男、三男だけで1/3ずつ相続することになります。

 

この〝争族〟にはいろいろと変わった側面があります。主たる遺産が印税という目に見えない著作権であること、後妻業ビジネスという新しい言葉が使われていること、個人同士ではなく音楽事務所など法人絡みの問題になっていること、再々婚により異母兄弟の間に微妙な見解の相違があることなどで、これらが問題を一層複雑なものにしています。
きわめつけは三男の発言として、平尾さんが5年前に弁護士宛に遺言メールを送っており、故人の意思はそこに示されていると述べていることです。メールが事実であれば、そこに何らかの故人の意思を忖度することはできますが、残念ながら現在の法律では遺言としての効力は何もありません。
結局、今回の騒動においては後妻業ビジネスなのかどうかはともかく、平尾さんが生前にご自身の意思を明確に遺言として残さなかったことが最大の問題と言わざるをえません。とりわけ遺産額が大きく、しかも複数回の婚姻を経て親子や兄弟間に隙間風が吹いているようなケースであれば、なおさら遺言でしっかり意思表示をしておくべきです。
あるいは贈与などを組み合わせた全体的な生前相続対策などによって、相続人同士が不満を持たないようできるだけ公平に財産分与を図ることが大切でしょう。くれぐれも遺言をメールで済ませるようなことだけはしないでほしいものです。 

 

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