外国と比較した日本の相続税

私たちは何となく、相続したら相続税があるのは当り前のように思っています。(財産が控除額以下で支払う必要がない場合は別として)
ではこの相続税は、そもそもいつ頃どのような目的で生まれたのでしょうか。また日本の相続税は外国に比べ高いと言われているようですが、本当なのでしょうか。
相続税は1905年(明治38年)に日露戦争の戦費調達のため臨時で導入されたのが始まりですが、その後もそのまま存続して現在に至っています。戦前は長男が遺産をすべて相続する家督相続が基本でしたが、戦後は制度が変わり、また経済成長に合わせ相続税の税率も何度か改定されてきました。

相続税の主な目的は、次の二つと言われています。
①所得税を補完する
生前に非課税所得や少額贈与などさまざまな理由で軽減された税によって蓄積された財産を、相続において精算する。
②富の集中を抑制する
富裕者の相続財産に課税することで財産を減らし、財産が少ない人との経済的な格差を縮小する。

このような目的を持つ日本の相続税は、諸外国と比べ高いのでしょうか。2015年に最高税率が55%に上昇し、基礎控除額が大幅に減少してから、そのように言われることが多いようです。
相続税は相続した時に、財産の合計が基礎控除額を超えた場合に課税されます。超えた金額に応じて税率が変わり、1,000万円以下の10%から6億円超の55%まで少しずつ高くなります。これを累進課税と言います。3億円以上相続した場合は、50%以上を税金で納めなければなりません。

 

これを諸外国と比べてみると、まずイギリスの税率は一律40%で、累進課税の日本と比べると金額が少ないほど税負担が大きくなります。またフランスは金額に応じて5%~45%の累進課税ですが、夫婦の財産は共有との考え方から配偶者は免除されます。
ドイツは税率が7%~30%と日本に比べて大幅に低く、基礎控除額も日本より大きくなっています。さらにアメリカは相続税ではなく遺産税と呼ばれ、税率は18%~40%ですが約6億円の高額な基礎控除が適用されるため、多くのアメリカ人にとって遺産税は無縁と言われています。

一方で相続税がないか廃止された国もあります。香港、中国、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ロシア、スイス(一部課税)、スウェーデン、イタリア(一部課税)などです。このため相続税のない国に財産を移したいと考える人がいるかもしれません。
しかし日本に居住している限りは日本の相続税が課税されます。ですから相続税を完全に免れようとすれば相続税がない国に財産を移した上で、被相続人、相続人とも相続の10年以上前(以前は5年前)から海外へ居住しておくことが必要ですが、さすがにそこまでとなると難しいかもしれません。

このように見てくると、確かに日本は諸外国から見て相続税が高いように思われます。しかし生前からの相続対策などもあり、そうしたものをうまく活用すれば相続税の節税は可能ですので、ご心配の方は専門家に相談されることをお勧め致します。

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