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芸能人も相続対策をされている
平成の時代を生き抜いてその最後に亡くなられた芸能人から相続対策を学んでみたいと思います。普通の人に比べ相続額はやや大きいのですが、共通点は多いので参考になるはずです。
享年75歳でこの世を去った女優の樹木希林さんは、その半年ほど前にがんで余命宣告を受け、亡くなるまでの間に自身で葬儀や遺産相続の準備を済ませたそうです。
彼女は若い頃から芸能人には珍しく物を持たない生活にこだわり質素な暮しをしていましたが、不動産を購入することにはきわめて熱心で、亡くなる前には戸建て5軒、マンション3軒の計8軒、総額約10億円の不動産を所有していました。そして芸能人の知り合いなどにも、不動産を所有し賃貸物件として経営することを勧めていたそうです。芸能人はサラリーマンなどと違って老後の安定した生活保証がないため、家賃収入を年金代わりにするという考えがあったようです。
それに加え、不動産は例えば賃貸アパートなどを経営していると、貸付事業用宅地として200平米までは土地評価額が50%減額されます。ですから仮に5千万円の土地なら2千5百万円となって節税できますし、また賃貸契約はそのまま相続人が引き継ぐことができるなどのメリットもあります。
そんな彼女が亡くなり遺産相続をするにあたり、夫のロック歌手内田裕也さんには一軒の不動産も相続させませんでした。これには二つほど理由があり、一つはこの一次相続で配偶者に多額の不動産を相続させると1億6千万円の配偶者控除が適用できるため相続税は軽減されるが、その後に配偶者が亡くなった時の二次相続において子供たちに大きな負担がかかってくることです。特に高齢化が進む今日では、この二次相続まで含めて相続対策を考えておくことは大切でしょう。現実にも今年3月に内田裕也さんが亡くなっていますので、それを見越しての賢明な方法であったと言えます。
あと一つは、夫には名義変更や換金手続きなどが必要だったりする不動産ではなく、比較的自由に使える預貯金を遺すことで、生前に十分生活を楽しんでほしいとの配慮があったということです。きっと内田裕也さんも亡くなるまでの期間、その恩恵に大いに預かったのではないかと推測されます。
ちなみに樹木希林さんの相続人としては、夫の内田さんの他は娘の也哉子さんと婿養子の木本雅弘さん、孫の伽羅さんで、不動産関係は大部分がこの3人で相続したようです。娘に婿養子をもらうというのも、その意図は詳しくはわかりませんがあるいは相続問題を意識してのことなのかもしれませんね。
ともあれ樹木さんは生前にさまざまなことを考えて遺言をきちんとしたため、約10億円の不動産をはじめとする高額の遺産を相続人同士の間で何のトラブルもなく円満にすっきり相続させたのですから、その考え方や方法について私たちが学ぶべき点は多々あるように思います。葬儀も遺言にしたがって東京港区の光林寺で行われ、吉永小百合さん、宮沢りえさんら千五百人が参列して樹木さんとの別れを惜しんだとのことです。
どうぞ皆様も樹木希林さんの相続対策をご参考になさってください。